『めぞん一刻』のヒロイン「音無響子」は「五代裕作」に結構な頻度で「ビンタ」をします。平手打ちですね。
ビンタはいわゆる暴力・体罰として一般的に用いられネガティブな印象のある行動ですけど、作中で行われるビンタは、彼女の愛のバロメーターにもなりそうです。
めぞん一刻における「ビンタシーン」を挙げて、それぞれに見えることがあるのか、見えることがあるとすればそれは何か、を考察しました。
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『めぞん一刻』音無響子のビンタ
| 作品名 | めぞん一刻 |
| 作者 | 高橋留美子 |
| 単行本1巻と最終巻発行日 | 1982年5月1日、1987年7月1日 |
| ジャンル | 青年、恋愛、ラブコメ |
| 発行社 | 小学館 |
| レーベル | ビッグコミックス |
| 巻数 | 全15巻(単行本) |
『めぞん一刻』は高橋留美子さんによるラブコメ作品です。世間ではもはや昔の漫画と認識されているでしょうけど、個人的には何度読んでも新たな発見のある、古さを感じない名作です。
冒頭でも書きましたように、本稿では「音無響子」が「五代裕作」に「ビンタ」を食らわした場面を、私独断のランキング形式で紹介します。
本稿はあくまでも本作を考察するためのランキングです。暴力を推奨したり肯定したりするものでは決してありませんし、それを面白おかしく話題にするためのものでもないことをご留意ください。
『めぞん一刻』ビンタ一覧
『めぞん一刻』で描かれている、響子さんによる五代くんへのビンタシーンの一覧です。
以降書きます巻数は、単行本オリジナル版に対応したものになります。ご了承ください。
響子から五代へ
響子さんが五代くんにビンタをした場面です。
| No. | 登場巻・ページ / シーン | 発生理由 | ビンタ直後の響子のアクション | 考察の分類 |
| 1 | 1巻36ページ / 五代に胸を触られて(右1回) | セクハラへの怒り | 描写なし | 感情の先走り |
| 2 | 1巻81ページ / 五代に抱きかかえられて(右2回) | セクハラへの怒り | 天にいる亡夫に向かって謝る | 感情の先走り |
| 3 | 1巻159ページ / 五代に「犬がいいんですか?」と言われて(右1回) | デリカシーの欠如 | 描写なし | 自らと亡夫の尊厳を汚された |
| 4 | 1巻192ページ / 五代が自分を好きだと言ったのは冗談だと言われて(右1回) | 五代の「不誠実さ」への怒り(?) | 管理人室に駆け戻り、机に顔を伏せ亡夫に謝る | 自らと亡夫の尊厳を汚された |
| 5 | 2巻141ページ / 玄関先で五代がキスをしようとしてきた(右1回) | セクハラへの怒り | 一刻館の建物内に入っていった | 感情の先走り |
| 6 | 2巻162ページ / 玄関先で五代がパペットを使ってすり寄ってきた(パペットで右1回) | セクハラへの怒り(?) | 一刻館の建物内に入っていった | 感情の先走り(?) |
| 7 | 5巻226ページ / 路上で五代に子作りを協力すると言われ(左1回) | セクハラへの怒り | 一人で先に帰った | 感情の先走り |
| 8 | 6巻114ページ / 玄関先で五代にスカートの裾を持ち上げられ(右1回) | セクハラへの怒り | 描写なし | 感情の先走り |
| 9 | 13巻158ページ / 試験前日の夜に酒を呑んで帰ってきた(右1回) | 将来への期待と失望 | あなた自身の問題でしょ、もっと真面目にやれと怒鳴る | 未来への覚悟と責任を問う |
| 10 | 14巻102ページ / こずえが五代からプロポーズしてもらった、と聞いて(右1回) | 独占欲と怒り | 無言で去っていくが、追いかけてきた五代にアパートの立ち退きを要求 | 信頼の崩壊 |
以上。ちょうど10回でした。
五代から響子へ
実は、五代くんから響子さんへのビンタシーンも、わずかながらあります。
| No. | 登場巻・ページ / シーン | 発生理由 | ビンタ直後の響子のアクション | 考察の分類 |
| 1 | 7巻87ページ / 響子が危険な状況なのに助けを求めなかったから(左1回) | 響子の命より意地を優先したことへの怒り | 言い訳をしようとしたから嗜める | 対等なパートナーシップへの転換 |
| 2 | 14巻201ページ / 朱美のヒモになればいいとの暴言を受けて(優しく右1回) | 愛を行動で証明した | 言い訳くらい聞いてくださいと言う | 信頼の回復 |
以上の2回です。
傾向
響子さんによるビンタ10回には傾向が見えてくるようです。
物語の序盤に多く登場し、その後減少して散発的になり、終盤になると再び増加する、いわば「U字型」をしています。
また、序盤は「防御」、終盤は「試練」という言葉に集約される、とも私は考えています。
そして、響子さんのビンタはほぼ「右手」で行われています。
ところが5巻226ページの1回だけ左手で行われているのは興味深いです。
直前の225ページを見ると、響子さんは「左手にバッグとテニスのラケット」を持っていることを確認できます。
ですからビンタをするときに、わざわざ荷物を右手に持ち替えて、左手でビンタをしたことになりそうです。
それはとても不自然な動作に思えることから、単純に作画のミスである可能性が高いと考えます。
また、1巻81ページは「右2回」と書いています。こちらは右手で五代くんの左右の頬を1回ずつ打っているようです。擬音が「ぱち ぺち」とあるため2回としています。
【考察I】序盤:未亡人の壁と「防御」
上記一覧を踏まえて、響子さんの為人、あるいは五代くんとの関係性などに、どのようなものが見えてくるのかを考えてみましょう。
序盤、2巻まででビンタの回数が全体の過半数を占めています。
これらのビンタの持つ意味は、感情の先走りが主な理由に見えます。
しかし、その後の行動を見てわかるように「亡き夫に謝る」いることから、ビンタの本質には「未亡人としての立場を守るための防御」、あるいは、結果的に抱きつかれるなどの行為を許した「自己嫌悪」があるように思います。
画像は1巻159ページで、五代に「やっぱり犬が……いいんですか……?」と言われたときのものです。
前提として、このときの彼は音無惣一郎がどのような人物かをわかっていません。知っているのは名前と響子さんの夫であること、亡くなっていることくらいで、顔などの外見を知りません。
その前提で、五代くんがその前日に、頭部が犬の惣一郎となった惣一郎(人)と響子さんが抱き合っている「夢」を見ました。その直後、惣一郎さん(犬)に抱きつかれている響子さんを見て、犬がいいんですか、という発言が出ています。要するに五代くんの中で夢と現実が曖昧になっているのですね。
1巻192ページでの、「五代が自分を好きだと言ったのは冗談だ」と言われたところも、五代くんは、響子さんを好きだと言ったは言ったのですが酔っていて覚えておらず、失礼なことを言ったのではないかと周りに尋ねたところ「裸踊りをして見ろを迫った」みたいなウソを吹き込まれてしまっています。そのために前日あなたにしたことは「嘘」だと響子さんに言いました。
しかし、響子さんは好きだと言われているのですから、それが「冗談」と言われたので、冗談で好きだなんて言ったのか、とビンタをしています。
この2点に共通して言えることは、五代への怒りもあるとは思いますが、それ以上に「動揺した自分」と「亡き夫・惣一郎さんの尊厳」を守るための行動の色合いが濃いと感じられます。
いわば過去への執着に根ざした拒絶行動と言えるでしょう。
【考察II】終盤:愛と未来への「最後の試練」
序盤にあれほど多かったビンタは、6巻114ページを最後に、その後中盤から終盤13巻158ページまで登場しなくなります。
そして13巻14巻で作者さんが思い出したかのように再び登場します。

13巻158ページというと、「PART♥8 迎えうち」、五代くんが保父、今で言うところの「保育士」ですが、その資格試験の前日です。
単行本は全15巻のため、物語のクライマックスに足を踏み入れようとするところ、と言って差し支えないでしょう。
13巻でのビンタの機能としては、発生理由が序盤とは大きく異なる点が注目されます。
序盤の胸に触れたりキスをしようとしたりといったセクハラが理由ではなく、社会的責任や愛の真剣度が理由に変わっていると読み取れるからです。
13巻「PART♥8 迎えうち」は、保父試験の前日にも関わらず、響子さんに別れを告げられた「三鷹瞬」はまだ彼女のことを諦めていないと考えた五代くん、三鷹さんの自宅に赴き、男同士の決着をつけようとします。もう一度書きますが保父試験の前日の夜です。
喧嘩をしてどちらが強いかで勝負を決めようとしています(どういう理屈か、当時子どもだった私にはわかりませんでしたし、今もわかりません)が、警察官に目をつけられたことで結局は喧嘩をせずにトーンダウンしてしまいます。
警察官の疑いを誤魔化すために、二人で仲良く酒を呑むフリをしていた流れで、トーンダウン後も二人で酒を呑んでいたのですが、保父試験が明日ということを知った三鷹さんは彼に呆れつつ、自分のせいで落ちたと思われたらたまらないと、五代くんに帰れと言い、別れます。
別れた五代くんが時計坂駅に降り立つと、響子さんが傘を指して待っていて、五代くんに飲んでいるのかと聞いた直後にビンタをしました。
このビンタは、彼の未来の責任を問う、いわば「ムチ」であって、序盤の響子さんのような後ろ向いた「過去(惣一郎さん)」を見ているのではなく、前を向いて未来を見据えているが故に生じた行動と言えるでしょう。
【転換点】五代くんからのビンタ
先ほど五代くんから響子さんへの、全2回のビンタシーンがあると書きました。
最初は響子さんからのビンタのみを取り上げる予定だったのですが、物語を語る上で結構重要そうです。
五代→響子の意味することは?
五代くんから響子さんへのビンタが、物語上、意味するところは何でしょうか。

ばかたれっ。
7巻「PART♥4 落ちていくのも」87ページより
なんで助けてくれって言わなかったんだ!!
一つ言えるのは、響子さんが五代くんの2歳年上である点です(2巻「PART♥11 マフ等、あげます」218ページ)。
五代くんが年下ですし、彼にとっては住んでいる下宿やの管理人でもあるため、それまでの二人の関係は五代くんが彼女に対し年上・目上の対応をしていました。
が、7巻の87ページのそれは、対等な相手への行動ですし、引用のセリフを見てもわかるとおり、緊急時ということもあり「タメ口」です。
その後、彼女の代わりと言っていいのか、五代くんが脚を骨折・入院するのですが、そこでの二人の関係は、それまでとは一つ二つと段階を進めたものに変化しています。
彼の言葉遣いはその後、敬語・丁寧語に戻され、物語の最終盤も最終盤になるまで維持されることになります。
このシーン以降、五代くんはもちろんのこと、響子さんとしても対等な立場として彼を見ているようで、それまで基本姿勢だった「縦の人間関係」からの脱却し「横の人間関係」に変化したことを象徴するシーンが、7巻における五代→響子のビンタと言えるでしょう。
五代のビンタが果たした役割
五代くんのビンタが物語に果たした役割は何でしょうか。
7巻のビンタは先ほども触れたように、五代くんが物語で初めて、(喧嘩をしたことによる)響子さんの意地を許さず、彼女を守る覚悟を示した、二人の力関係が対等なものになった転換点になっています。
14巻201ページのビンタは、朱美さんとラブホテルから出てきた五代くんへの、響子さんの信頼が崩壊したことに対して、誤解を解こうとしている最中に発生しています。
「やましいことがないなら殴っていい」と言う彼女に、優しくビンタをすることで、言葉ではなく身体で誤解であることを証明をしています。
こちらは響子さんの、自分に対する「不信の壁を破壊」するビンタと言うことができそうです。
結果として、優しいビンタにもかかわらず、ビンタをされたことで響子さんは、涙を流しながら「嫌いよ…」と言い残し、スナック「茶々丸」を飛び出していきます。追いかけ、追いついた五代くんと、関係が一気に進むことになります。
物語のクライマックスに向かうスイッチを入れる、優しいビンタでした。
涙+「嫌いよ」は一読すると拒絶の決定打に見えるかもしれませんけど、実態はむしろ逆で、物理的に痛くも何ともないビンタに涙を流したのですから、この涙は彼のことを好きであることの裏返しでしかなく、もう一度信頼関係を築きたい気持ちの表れと思います。
メタ的に言えば、私はこれから立ち去るけど絶対に追いかけて来てね、という合図でしょう。
朱美さんが、彼女が置いていったコートを五代くんに渡しながら、「コートくらい届けてやれば? 冷えてきたし」とナイスフォローをしたことで、それまで「嫌い」と言われて呆然としていた五代くんが事態にハッと気づいて追いかけることになります。
そして物語のクライマックスへ……という流れです。
ビンタは普通にあったか?
ビンタは昭和の時代は普通のことだったのでしょうか。
あくまでも昭和生まれで、子どもの頃にも昭和時代だった私の感覚ですけど「ありません」。
あくまでも私の感覚ですけど、本作のように何度もビンタをしたりされたりすることは、昭和の時代でもそれほど一般的ではなかったのではないでしょうか。
漫画やドラマ、映画の特にいわゆるスポ根ものや学園ものでは、熱血教師が生徒を殴る描写はままあったと思います。
ですけど個人的な体感としては多くはありませんでした。
まとめ
まとめます。
『めぞん一刻』の音無響子のビンタは、物語序盤は亡夫・惣一郎との過去の防衛の意識があり、終盤のそれは五代裕作への未来の要求、という意識が大転換がある。五代のビンタは、彼女の要求に応える覚悟を示したものと言えそう。
二人それぞれのビンタは、二人の年齢や社会的立場を乗り越え、お互いの想いに正面から向き合う、後に夫婦となるまでの絆を築き上げるために、フックとなる行為である。
というのが、私なりの解釈と感想でした。
この流れは、以前記事にしました「『めぞん一刻』音無響子の暴言・失言TOP13とその深層考察」に大きく関係するところですで、ぜひあわせて読んでみてください。
本文に書いたことは私の個人的な意見や解釈でしかありません。決して情報を鵜呑みになさらず、参考程度に抑えて受け取ってくださると幸いです。
ということで、今回はここまでになります。
最後まで読んでくださり、誠にありがとうございます。
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