『めぞん一刻』五代と響子の娘「春香」命名考察:「陽だまり」と愛の誓い

めぞん一刻
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今回は、漫画『めぞん一刻』の最終回に描かれた、「音無響子」と「五代裕作」の間に生まれた子「春香(はるか)」についてです。

どうして二人の子の名前が「春香」と名づけられたのか?
最終話まで読み進めますと、響子さんの過去と現在、五代くんの過去と現在が交差した末の愛の結実が彼女であるなら、この名前の他には考えられないほど、動かしようのない「答え」であったように思えました。

また、「はるか」という音は、響子さんの亡き夫「音無惣一郎」への想いにもなっていそうです。
それは一体どういうことかを具体的に見ていきましょう。

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五代春香

作品名めぞん一刻
作者高橋留美子
単行本1巻と最終巻発行日1982年5月1日、1987年7月1日
ジャンル青年、恋愛、ラブコメ
発行社小学館
レーベルビッグコミックス
巻数全15巻(単行本)

高橋留美子さんによる、昭和後期から末期の時代に描かれ、時代を飛び越えて令和の現代まで愛読されている名作ラブコメ『めぞん一刻』。

五代春香の顔の画像です。
15巻「PART♥ P.S.一刻館」221ページより

本稿ではメインキャラクターの二人「音無響子」と「五代裕作」の子「五代春香」に関して触れていきます。

春香ちゃんは単行本(オリジナル版)の15巻220~222ページに登場します。
222ページが、本作の最終話最終ページです。

15巻の初版が1987年7月1日の発行です。
本作はリアルの年月と一致させて描かれているため、春香ちゃんが描かれているコマでは桜吹雪が舞っていますし、何より名前が「春の香り」ですから、1987年の春に生まれた認識でいいと思います。女の子です。

響子:惣一郎さんとの春

私が持っているのは単行本のオリジナル版です。書かれた巻数と話数、ページ数はそれに対応したものになります。ご了承ください。

響子さんは、高校時代に地学の非常勤講師であった「音無惣一郎」と出会い、彼女が彼に恋をして、二人は結婚しましたが、嫁いでわずか半年ほどで夫を亡くし未亡人となりました。
惣一郎さんとの結婚生活は短い期間でしたが、彼女にとってその半年は幸せなものだったことが、作中に何度か語られています。

春みたいな

惣一郎さんとの日々で、最も直接的に春が語られている場面が10巻にあります。

そうねえ、悩み…とかあんまりピンとこない、春みたいな………おだやかな人だった……(回想シーン挟む)気楽な人だった……

10巻「PART♥5 桜迷路」95, 97ページより

この少し前に五代くんが就職をした会社が、内定決定直後に突如として倒産してしまい、彼は就職未定のまま大学を卒業します。今で言うフリーターです。
その後、大学時代で同じ人形劇クラブだった「黒木」さんが保母さんとなり、彼女の誘いがあって同じ保育園バイトを始めました。

五代くんの就職に関しては以前、詳しく書いています。上にリンクを貼った記事がそれですので、あわせてご覧になってください。

話を戻しますと、響子さんが、惣一郎さんの墓参り後、音無家で音無老人と義姉とで、そんな五代くんのことを話しています。
五代くんは義姉の娘「郁子」ちゃんを家庭教師していたり、一刻館そのものが音無の家のものみたいですので、それらの縁があります。

そこで音無老人が、五代くんは息子・惣一郎と似た道を歩んでいると言うものですから、響子さんが惣一郎さんのことを思い出したのが引用部です。

老「もっとも惣一郎の場合、無職だからって全然おちこんでなかったがな」
姉「ほーんと家族の方がおろおろしちゃってねえ。あの子はねー、あなたの高校の講師になるまでは、ずいぶん長いことブラブラしててね」
老「飯ばっかり食っとったなあ……」
姉「ほんとによく食べましたね……」

10巻「PART♥5 桜迷路」94~95ページより

音無老人と義姉の思い出話です。超然としていた人物であることが語られています。

続く響子さんの回想でも、桜吹雪の舞っている時期なのでおそらく4月、響子さんのクラスの地学の担当に就任したばかりの頃と思われますが、「地学研究室」(同巻96ページ2コマ目より)を訪れた響子さんを迎えた惣一郎さんが、彼女にお茶を入れ、買ってきた「まんじゅう」を彼女に誘いながら、桜が散る様子を見ていると桜餅にすべきだったと、嘘泣きをしながら後悔している様子が描かれています。
売り切れだったそう。それでもまんじゅうも捨てたものじゃないから、と気を取り直して食べましょう、と言っています。

非常勤講師の職に就いた年かはわからないものの、桜の咲く時期であれば4月、4月は新学期の時期ですから、教師はするべきことが特に多い時期ではないかと思われます。
それでも、わざわざ学校を出て近くの和菓子屋まで行って、まんじゅうを買ってきたのですから呑気でしょうね。
響子さんは地学研究室を訪れた際、厚い紙を胸に抱えているので、地学の授業で用いたレポート用紙か何かなのでしょう。であるなら彼は饅頭を買っておき、響子さんが来るのを待っていたのかもしれません。

そんな惣一郎さんの春のような穏やかさを、娘に継承させたい想いが、もしかしたら響子さん(五代くんもかもしれませんが)にはあったのかもしれません。

「はるか」の音

春香の読みは「はるか」です。
「遥か」と同じ音になります。ここにも意味が含まれているように思います。

遥かとは、物理的な距離、心の距離が極めて離れていることですね。時間や程度にも用いられるでしょうか。

このことは、響子さんが五代くんと結婚をしたことで前を向くようになった、過去=惣一郎さんに囚われていた過去からの脱却の意味があるのでは、と個人的に考えています。
惣一郎さんを「大切な記憶」であることに変わりはないけれど、五代くんと歩むことを決めたことで未亡人としての過去に終止符を打った、彼女なりの決別や卒業の証ではないかと。

それが春香という名前の音の響きに込められているようです。

響子:五代がもたらした安堵感

後に新たな夫となる五代くんに、彼女は「穏やかさ」を感じていそうです。

旅先のホッとする

単行本10巻末「PART♥11 開かれた扉」で、響子さんと三鷹さんが抱き合っていると勘違いした五代くんは、(11巻「PART♥1 閉じられた扉」)その夜、一刻館5号室のドアを挟んで響子さんに「あなたのこと なんとも思っていませんから」と言いました。
それがショックで彼女は彼の前で涙を流し、一人旅に出ます。
五代くんは、彼女の涙の意味を知りたくて、三鷹とはどうなっているのかも知りたくて、彼女を追いかけます。

どうしたんだろ。
なんだかホッとする‥‥

11巻「PART♥5 夢一夜」97ページより

旅先でニアミスを繰り返しながらとうとう出会えたとき、響子さんは五代くんを「どうしたんだろ。なんだかホッとする」と言いました。引用部。

彼女にとって、惣一郎さんが春のような穏やかな人だと感じたように、引用部のシーンで五代くんに対して、惣一郎さんに似た「穏やかさ」を感じ取れたのだと思います。

三鷹さんと結婚しようとさえしていた響子さんですが、それも何も、すべて五代くんの自分に対する想いに疑念があったから、自分のことだけを見てくれないなら、三鷹さんと結婚してやる、という五代くんの想いありきで考えていたことに、彼女は気づいていました。

彼に何とも思っていないと言われた直後に涙を流した理由も、夢に出てきた惣一郎さんによって、気づけたはずです。

夢のことに関しては以前、当サイトで記事にしています。上にリンクを貼った記事がそれ。あわせてご覧になってください。

何とも思っていないと言った彼が、旅先に来てくれた。たまたま旅先が重なったようなことを言っているけれど、本当は私に会いに来てくれたんじゃないのか、そうであって欲しいと思っています。
追いかけてきた、三鷹さんとはどうなったのか、涙の意味は何かと、五代くんも言えばいいのに・聞けばいいのいに言えない・聞けないものですから、無言のときが流れます。

しかし、その何もない時間を二人で過ごすなかで、響子さんは五代くんに亡夫とはまた異なる種類の「穏やかさ」を感じたようでした。そしてその瞬間こそ、彼女が彼に本気で好意を抱いた瞬間でもあったことでしょう。

受動と能動

五代くんと惣一郎さんとでは、ある「決定的な違い」があります。

惣一郎さんとの結婚は、響子さんからの一途な想いを、惣一郎さんが受け入れたことで結びついた可能性が高いです。
作中、彼らの馴れ初めは明確に描かれていないものの、高校時代の響子さんが彼に、積極的にアプローチを仕掛けたことは何度か描かれています(9巻61ページ、11巻193ページ)。
であるなら、惣一郎さんの態度は「待ち」、受動的なものと言えます。

一方で、五代くんとの恋や結婚は、1巻からずっと積極的にアプローチを仕掛けています(と言っても優柔不断でグズな人でもありますから、なかなか決定打を打てませんでしたが)。
つまり、彼は能動的な努力によって彼女を自分に振り向かせることに成功したものです。

それは性格的なことばかりではなく、惣一郎さんが響子さんの9~10歳年上であり、五代くんが彼女より2歳年下であることと無関係ではないでしょう。もちろん初婚と再婚ということもあるはずです。

五代:努力の末に掴んだ「希望の春」

これまでは響子さんにとって、娘を春香と命名した意味を書きました。
彼女の夫・五代くんにとって、春香とした意味は何でしょうか。

毎年が正念場

思えば、彼は物語を通して冬の時代にあったのかもしれません。

物語開始時には浪人生でしたし、留年の危機もありました。就職活動に難航し、ギリギリで滑り込んだものの、卒業を目前に会社が倒産し無職のまま卒業(意図的に単位を落として留年した方が、就職にかぎって言えば得策だったかも)、フリーター生活になり保父(保育士)が向いていると思えた直後にリストラ、友人の誘いにほいほい乗ったらキャバレーの呼び込みをさせられる。
このように書き出すとなかなか壮絶な半生に思います。

青春時代にもかかわらず、身持ちの固い未亡人を好きになってしまったことで、一般的に20歳前後の青年であれば経験するであろうことも、できなった場合もあったでしょう。

あんたくらい毎年 正念場迎えてる男もめずらしいわね。

13巻「PART♥7 100%SHONEN場」118ページより

一刻館の住人、6号室「六本木朱美」さんのセリフです。
五代くんが保父試験の勉強に勤しむ中、彼の邪魔をするために、「一の瀬花枝」さんと「四谷」(下の名前は作中明らかになっていません)さんとともに、彼の部屋で宴会をしている場面の。

この朱美さんのセリフが、彼の半生を最も端的に表していると言えます。

人生の春

そんな正念場だらけだった彼が、保父という天職を見つけ、そして7年間募らせた恋を実らせたこと、言い換えますと、長い長い冬を乗り越え春を迎えました。

その象徴として、最愛の妻との間に授かった子が存在するでしょうし、その子の名前に「春」の言葉を入れることは、とても自然なことに感じられます。

これからの三人で「幸せな家庭を築く」という、彼の決意表明でもありそうです。

アニメOP「陽だまり」

アニメ版『めぞん一刻』の最終クールのオープニングソングは、故・村下孝蔵さんの「陽だまり」です。
歌詞を読むと、夕暮れの情景世界とともに、五代くんの響子さんへの焦がれる恋を描いているようです。
つまり、五代くんにとって響子さんが陽だまりなのだ、という歌詞です。

しかし、先ほどもご紹介した11巻「PART♥5 夢一夜」での響子さんの、彼に対する「ホッとする」想いは、響子さんにとって彼が「陽だまり」であるかのようです。

響子さんは、世界で誰よりも愛していた夫を亡すという強い孤独(寒さ)にさいなまれていました。そんな彼女を癒し、未来を照らす希望(暖かさ)を与えた人物として、五代くんが彼女にとっての光になりました。

二人にとっては、お互い「陽だまり」である。陽だまりと陽だまりの間に生まれた子から春の香りが漂うのは、極めて自然なことです。

まとめ

まとめます。

『めぞん一刻』の音無響子と五代裕作の子「春香」が「春の香り」と名付けられた理由。
響子にとっては、「春の穏やかさ」を持った亡夫・惣一郎を愛し、悲しみの最中に出会った五代にいつしか「陽だまり」を感じていた。
五代にとっても、アニメOPから、長い浪人・大学、フリーター生活という冬の時代から抜け出し、冬の間も常に自分を照らしてくれた響子に、「陽だまり」を感じていた。
お互いがお互いの陽だまりなっていた、そんな響子と五代の愛の結実としてこの世に遣わされた女児が常に「春の香り」を漂わせる名前を纏うのは至極当然に思える。
そして、三人が歩みだすこれからの人生もまた、穏やかな光に包まれていそう、とも思えた。

というのが、私なりの解釈と感想でした。

次回は、響子さんと五代くんの間に生まれた子「春香」ちゃんと名付けられたのか、子の名前に隠された二人の想い、決別と継承の物語を深堀りします。お楽しみに!

本文に書いたことは私の個人的な意見や解釈でしかありません。決して情報を鵜呑みになさらず、参考程度に抑えて受け取ってくださると幸いです。

ということで、今回はここまでになります。
最後まで読んでくださり、誠にありがとうございます。

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