『めぞん一刻』響子さんの「私」と「あたし」の使い分けから見える心情と恋の軌跡

めぞん一刻
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めぞん一刻』のヒロイン『音無響子』は、比較的2面性のはっきりした女性です。表面上は上品ですけど内面は結構口が悪い。性格もいいのですけど、いいだけではない。
そこがダメなのではなく、そこが大きな魅力の一つで、生真面目さや繊細さの現れとも言えるでしょう。

今回は響子さんは一人称が「私」と「あたし」の2種類ある点に着目しています。
作者の高橋留美子さんがこの一人称の使い分けで響子さんの心理状態を表現している、彼女の気持ちのバロメーターにもなっているのではないか考えました。
この使い分けを分析することで、管理人としての彼女、未亡人としての彼女、一人の女性としての彼女の人物像を考察していきます。

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音無響子の一人称について

作品名めぞん一刻
作者高橋留美子
単行本1巻と最終巻発行日1982年5月1日、1987年7月1日
ジャンル青年、恋愛、ラブコメ
発行社小学館
レーベルビッグコミックス
巻数全15巻(単行本)

高橋留美子さんによる『めぞん一刻』は連載終了から40年ほど経とうとしていますが、令和の現在でも評価の高いラブコメの名作です。

今回は、冒頭でも書きましたように、メインキャラクターの一人「音無響子」は大きく分けて「私」と「あたし」の二通り一人称を使い分けており、どのように使い分けているかで、彼女の人物像が見えるのではないかと考え、調べていこうと思っています。

私vs.あたし

響子さんが自分自身のことを「私」と言っている場面と、「あたし」と言っている場面の、それぞれの数について具体的に見ていきましょう。

数えてみた

響子さんの「私」と「あたし」の発言数を数えてみました。
※記事に書かれている巻数はオリジナル版(全15巻)に対応しています。

下のリストにまとめました。
見方は、「・」が「私」で「◯が「あたし」です。1巻の中に数字があるのは話数になります。
例えば1巻の1話では「私」が3回、8話では「私」が2回「あたし」が1回発せられている、という感じに読んでください。

※五代くんは妄想をよくするのですが、彼の妄想内の響子さんのセリフは除外しています。

  • 1巻:1・・・、2・・・、3・・・・、4・・、5・・・・・・・・・・・、6、7、8・◯・ 9・◯、10・◯・
  • 2巻:1・・・・・・、2・・、3・◯、4、5・・、6・・・(「わたし」と平仮名)、7、8・・◯(劇中のセリフだがアドリブなのでカウント)◯、9・、10・、11
  • 3巻:1・・◯◯、2、3◯、4・◯◯・、5・◯◯◯◯・、6◯、7・・◯◯、8◯・◯、9◯◯◯◯、10・・、11◯◯◯◯
  • 4巻:1◯・ 2・◯◯◯◯◯・◯、3、4・・◯・ーー(酔って自分のことを「おねえさん」呼び)、5・、6、7・・◯、8◯◯・、9、10◯・、11◯◯◯
  • 5巻:1、2◯◯、3、4◯◯・、5◯、6◯◯、7、8・、9◯◯◯◯・◯◯◯、10◯(響子さんの妄想内のセリフですが響子さんの妄想なのでカウント)
  • 6巻:1◯、2(響子さんの高校時代の妄想内で「あたし」がありましたが高校時代なのでカウントせず)、3◯◯・、4、5、6、7、8、9、10、11
  • 7巻:1・◯、2・・、3◯◯◯◯◯◯、4◯◯、5◯◯◯◯◯◯◯◯◯、6◯、7・◯・◯・・、8◯◯◯◯、9◯・、10◯・・・・・◯・◯◯・
  • 8巻:1◯・、2◯◯◯・、3・・・、4◯◯◯・・・、5・・、6・・、7◯・・、8◯◯、9・、10・◯◯◯・、11
  • 9巻:1・◯◯◯、2◯、3、4、5・、6◯、7・・・・・・・、8・、9・・・、10、11・
  • 10巻:1、2・・・、3、4◯・・◯、5・、6◯◯、7・◯◯、8・・◯◯◯◯◯◯、9◯、10・・・・・・◯・、11・◯
  • 11巻:1◯、2◯、3、4◯、5◯・◯◯◯・、6、7・・、8、9・・、10・◯◯、11◯◯・(わたし)
  • 12巻:1(三鷹さんの妄想内に「私」あり、カウントせず)、2◯・、3・、4、5・、6・、7◯◯、8、9◯、10◯◯◯、11、12
  • 13巻:1、2、3・、4・・◯・、5◯◯・◯・◯◯◯、6◯◯、7・、8、9◯◯・(わたし)・◯◯、10、11
  • 14巻:1◯、2、3◯◯◯◯◯◯、4・、5・◯◯、6◯、7・・・◯、8◯、9◯・◯◯、10・・◯◯◯、11◯◯◯◯◯
  • 15巻:1 2・・◯◯◯◯・・・・◯、3、4◯、5・、6、7・◯、8◯◯・・・・、9◯◯、10◯

わかりにくいので表にもまとめています。

「私」「あたし」合計「あたし」比率(近似)
12833110%
21832114%
310223269%
410152560%
52151788%
613475%
714314569%
816132945%
91451926%
1015153050%
117111861%
12471164%
139132259%
147233077%
1512122450%

全15巻トータル:あたし 231回/私 187回 → 約55.3%で「あたし」がやや優勢でした。

私一人で行った作業で読み間違いなどあるかもしれませんので、参考程度に受け取ってください。

読み取れること

上記にまとめたリストと表から何を読み取れるかを見ていきます。

最序盤は「私」

最序盤は「私」で統一されています。

響子さんが一刻館の住人に管理人就任の挨拶をした場面です。
1巻「PART♥1 隣はなにを…!?」6ページより

私、きょうからこのアパートの管理人になりました。
音無響子と申します。

1巻「PART♥1 隣はなにを…!?」6ページより

1巻1話、ここで響子さんは下宿屋「一刻館」の管理人に就任します。
引用部は住人の「五代裕作」や「一の瀬花枝」、「四谷」氏(下の名前は明らかになっていません)、「六本木朱美」に挨拶している様子です。
「私」ですね。

1話だけでなく2話以降も、最序盤に関しては響子さんの一人称は「私」のみでした。

初「あたし」は?

それでは「あたし」が初登場したのはいつでしょうか。

いえ、あたしは別に……

1巻「PART♥8 惣一郎の影」165ページより

「初あたし」は1巻「PART♥8 惣一郎の影」です。
響子さんの姪「郁子」ちゃんの家庭教師を五代くんに頼むことになり、五代くんは響子さんのたっての頼みなら、と引き受けたときのセリフです。

1巻ですので序盤ではあるのですが、それでも1話から7話まで一度も発しなかった、ということですから、この「あたし」は何気に大きな変化と思います。

3巻で逆転

3巻で「あたし」が「私」を逆転しています。
3巻で物語上何か大きな変かが起こっているものと想像されます。

調べてみますと、響子さんの両親、特に母の「律子」さんが、娘・響子に一刻館の管理人を辞めさせようとあれこれと策を講じています。
また、最後に収録されている「PART♥11 怒りのウィドウ」では、響子さんと三角関係になっている五代くんと「三鷹瞬」の二人の男性が、いずれも他の女性と親しくなっている巻でした。

五代くんはガールフレンド「七尾こずえ」と会っているので、響子さんが怒るのもわかります(響子さんは五代くんと付き合っていないのに)けど、三鷹さんに関しては、ただ犬が怖くて抱きついているところを、彼女が偶然見てしまっただけなので、彼の犬嫌いを知らない響子さんの勘違いなのですが、彼女には彼が女性と親しくしているように見えています。

つまり「管理人さんの感情が大きく揺れ動いている」巻と言えるでしょう。

7巻と14巻

「あたし」の登場回数に着目しますと、7巻と14巻が突出しているようです。

7巻と14巻で何が起こっているかを確認しました。
7巻では「PART♥4 落ちていくのも」で、響子さんと五代くんが、物語始まって以来の「大喧嘩」をしました。
屋根の修理をしていた響子さん、彼女が屋根にいるのを知らずに五代くんは一刻館2階の自室5号室「響子のばっきゃろーーっ!!」と叫ぶと、即座に「なんですってえ!?」と屋根から大声が返ってきました(82ページ)。
五代くんが窓を開けて見上げると、響子さんが下を覗き込んでいて、そこからケンカが始まりました。
喧嘩別れになり、怒っていた響子さんは屋根の上ですっと立ち上がったときに足を滑らせ、屋根から落ちそうになり、音に気づいた五代くんが助けたのですが、代わりに五代くんが落ちてしまい足を骨折しています。そのまま入院。

14巻は、物語のクライマックスで、五代くんと響子さんが恋人になるまでのゴタゴタが描かれています。
14巻までのストーリーも、簡単にまとめれば二人が恋人になるまでのゴタゴタなのですけど、14巻時点では既に三鷹さんが「九条明日菜」と結婚することになり、五代くんと響子さんとの三角関係は解消しています。
五代くんとこずえちゃんの関係解消をどのように持っていくか、の大問題を解消する段階に入っていました。
解消までに複数の行き違いがあり、二人が歩み寄るかと思いきや、また大きな出来事があって離れて、を幾度か繰り返す、まさにジェットコースターな行き違いです。

やはり7巻と同じく14巻でも管理人さんの感情が大きく揺れ動いています。
3巻との違いは、この2冊は3巻より恋愛的な意味での揺れ動きである点でしょう。

6巻と12巻

逆に6巻では「私」も「あたし」も極端に少ないです。
こちらは何があったのでしょうか。

6巻は五代くんの祖母「ゆかり」さんが上京し、一刻館の5号室に住み着いています。
ゆかりさんは『うる星やつら』の錯乱坊(チェリー)と顔の似ている、彼と同様、強烈なキャラクターの持ち主です。
五代くんと響子さんの恋愛も描かれていますけど、どちらかというとゆかりさんに主役を持っていかれています。さらに、五代くんが響子さんとのわだかまりから逃げるために独り旅に出てもいます。
よって、響子さんの出番が少ない、メインに描かれている回数の少ない巻と言って差し支えないでしょう。
響子さんの出番が少ないために彼女のセリフも他巻に比べて少なめで、セリフが少ないなら当然「私」も「あたし」も少ない道理です。

6巻ほどではないにせよ、12巻も「私」「あたし」ともに少ない巻です。
12巻では、五代くんがアルバイトで勤めていた保育園をクビになりキャバレーの呼び込みで働くことになったこと、それと九条明日菜が三鷹さんに急接近していることがメインに描かれています。
つまりは響子さんがメインに描かれている回が少なく、出番も少なめですから、6巻と同じ原因があると考えられます。

9巻での「私」の盛り返し

また、9巻では「私」が盛り返しています。

9巻では何が起こっているかと言いますと、五代くんが教育実習のために響子さんの母校の女子高校に通っています。
その生徒の一人「八神いぶき」に好かれて、彼女が彼の部屋まで泊まりに来るなど、二人の仲をかき乱しています。

響子さんとしては、まだ彼女をライバルだとは考えていません。
子どものすることと高を括っていたのでしょう、そこで八神に対して心身ともに成熟した大人の立ち振舞いを意識的にしていることが読み取れそうです。

15巻で50-50

14巻までのドタバタを経て、14巻の修羅場の連続を経て、最終15巻では使用率が半々になるというのも奇跡的ですね。
回数を揃えるなんてことを、作者さんは意図していないと思いますから尚さら。

「私」を発する場面

「私」を使っている場面について考えてみましょう。
「あたし」との比較としてわかりやすいエピソードがありました。3巻「PART5 家族の焦燥」です。

オフィシャルな場

3巻5話での「私」発言を見てみます。

やりたいんです、私。

3巻「PART♥5 家族の焦燥」100ページより

先ほども説明しましたように、このエピソードでは響子さんが両親から管理人を辞めるように説得されます。しかし、彼女はそれを固辞しました。
理由は一刻館が今の家であり職場だからですね。
3巻8話「私は負けない!!」で、夫「惣一郎」と死別して2年と言っているので、引用部の同巻5話段階では未亡人となって2年弱ほどしか経っていません。
3巻8話ではまだ音無の姓でいたいと言っています(157ページ)から、この頃は再婚を考えていないようです。
つまり、独りで生きていこうとしている彼女にとって、一刻館が「拠り所」になっています。

一刻館は古い木造建築で、色々とボロが出ている建物の修繕に取り組んでいるときのセリフが引用部です。仕事をしたい、一刻館の建物を守りたい意識が「私」からも現れているようです。

また、1巻1話で響子さんが管理人としてアパートの住人に初めて会い、挨拶をしたときは「私」だったことは既にお伝えしたとおりです。

これはオフィシャルな場、すなわち管理人としての仕事をしているときは「私」を用いている可能性があります。

理性的な立ち振舞い

そして、理性的な立ち振舞いをしているとき、理性が感情を制御できているときは「私」となっている可能性は大いにあるでしょう。

3巻から8巻まで「あたし」が優勢だったのに、9巻で再び「私」が優勢になった理由には、まだ子どもと思っている八神に対して大人であることを示すために、あえて「私」を多く使ったのでは、その結果として「あたし」を上回ったのだろうと私は考えています。

つまり2巻までは響子さんが意識的に理性的な立ち振舞をしていることが、この点からわかりそうです。

心の距離

心の距離感もあるでしょう。

1巻7話まで「私」だけだったことも、一刻館の環境に馴染んでいなかった緊張が上回っているから、理性的に振る舞おうとした結果なのかもしれません。

先述しました、7巻と14巻で「あたし」が多い理由とは対象的ですね。

キャラが定まっていない?

ただ、最序盤に関しては作者・高橋留美子さんの中で「音無響子のキャラ設定が固まっていない」可能性があるかもしれません。

どのような言葉遣いにするか、どのような性格か、どのような人間か。
物語の展開にしても、当初は五代くんとの恋愛を主軸にするつもりはなく、単に一刻館の住人を中心にした群像劇を描きたかっただけかもわかりません。

1巻でも、特に3話までの響子さんの言葉遣いや表情が固く、4話から彼女の言動がより生き生きとし出した印象を受けます。
留美子先生は、この辺りで音無響子という人物をつかめたのではないかな、と個人的には思っています。

「あたし」を発する場面

「あたし」を使っている場面をいくつか挙げてみましょう。

感情の高ぶり

「私」の項目と同じく3巻「PART5 家族の焦燥」を見てみます。

あんなでもあたしの仕事場なんですっ。

3巻「PART5 家族の焦燥」97ページより

「っ」からも感情の高ぶりを感じさせますね。

言っときますけどね、あたしは音無家に、義理だてして管理人やってんじゃないのよ。
あたし あそこが好きなの。

3巻「PART5 家族の焦燥」98ページより

先ほども書きましたように、このエピソードでは両親に管理人を辞めるよう諭されています。諭されると言いますか、半分喧嘩腰です。この頃は特に親子の人間関係がよくありません。
惣一郎さんとの結婚に反対していたようですし、再婚も早々に勧めてきたようですから、響子さんとしては嫌悪感があるのでしょう。
親の立場からすれば、一人娘に辛い想いをさせたくない親心でしょう。

ともかく、この2つのセリフから、「あたし」が感情の高ぶり(昂り)を現していることは十分あり得そうです。

親密さの表れ

あたしは親密さの表れということもあるでしょう。

例えば先ほど引用しました3巻「PART5 家族の焦燥」では、響子さんの両親とのやり取りが多く描かれています。比率は「私1:あたし3」です。
子は何歳になっても子ですから、肉親に対して娘のまま、素の状態であることの現れとして、作者さんは意識的に「あたし」を用いていることが伝わります。

恋愛の軌跡

「私」と「あたし」問題は、響子さんと五代くんの恋愛の軌跡を見る上でも、ひとつ大きなとっかかりになりそうです。

先ほどご紹介しましたように、7巻と14巻は際立って「あたし」が多い巻になっています。
「あたし」は感情的になっていることを表していることが、内容からも明確にわかります。
以降、具体的に見ていきましょう。

7巻「あたし」31回が意味するもの

7巻は五代くんと響子さんが物語始まって以来の大喧嘩をした巻で、彼女の心が大きく揺さぶられています。

響子さんが入院している五代くんにキスをしようとしている場面です。
7巻「PART♥5 宴会謝絶」109ページより

自分のせいで骨折・入院をした五代くんに対し、当初は自分は嫌われていると曲解して病院に行っていなかった彼女ですが、原因となったこずえちゃん手編みのセーターを自ら洗い、彼に手渡し、セーターに向き合うと宣言して、彼の看病に当たります。
セーターに向き合う、それはすなわち響子さんが彼への好意を明確に示したことになりますから、二人はキスをしそうになります。しかも響子さんから。
キスできたかどうかはご想像どおりです。

さらに6話を挟んだ「PART♥7 愛の骨格」でも、二人は抱き合って、と言うか松葉杖の五代くんを響子さんが支えつつ、二人が唇を近づけます。
こちらもこれまでにない急接近でしたが、三鷹さんの邪魔が入って未遂に終わります。

三鷹さんが、響子さんに看病してもらいたいがために、スキーで意図的に足を骨折する暴挙に出、また響子さんに対して積極的にアプローチを仕掛けたことで、響子さんの心は再び三鷹さんへと揺れ動くことになりました。
ちゃらんぽらんなのですよね、この辺りの彼女は。

もっと言えば、二人の看病をしようとしていた響子さんですが、五代くんにはこずえちゃんと従姉妹の「晶」が看病を買って出ましたし、三鷹さんにもたくさんのガールフレンド(女子大のテニス同好会の教え子)が来ていて、代わる代わる世話をすると買って出ています。
そこで、響子さんは2人に対してヒステリーを起こす、というオチになりました。

五代くんにとっては大きなチャンスを逃すことになりましたし、三鷹さんにとっても身から出た錆とは言え、同様でしょう。

響子さん的に考えても、どちらかを選べずふらふらするものの、未亡人として「一生ひとりでとおす」(4巻47ページ)と考えていた彼女が「舵」を切った意味でも、極めて重要な巻になっています。

このように、響子さんの心が大きく動いたことに間違いのない巻です。

14巻「あたし」23回が意味するもの

14巻では、こちらも先ほどご紹介しましたように、五代くんと響子さんが付き合う直前のゴタゴタが描かれています。
この二人が付き合うことは結婚とイコールですから、それはすなわち『めぞん一刻』の物語の終わりを意味します。
なので、これでもかと言うくらい二人の関係をかき乱します。最後の大盤振る舞い。

三鷹さんは九条明日菜との結婚が決まったため、五代・響子・三鷹の三角関係は終わりました。
もう一つ大きな三角形があり、それが響子・五代・こずえで、こちらの関係を整理する、つまりは五代くんがこずえちゃんと別れることを描いた、これが14巻から15巻の序盤になります。
要するに、この物語のクライマックスです。

上にも触れましたように、7巻の五代くんと響子さんの初めての大喧嘩のきっかけも、こずえちゃんと別れようとして会ったときに手編みのセーターをもらったことでした。
その頃から、彼はこずえちゃんと別れようとしていたのですが、別れたのは最終15巻です。

五代くんとしてはバイト先の同僚として知り合い、半ば強引にガールフレンド的な立ち位置になりました。
さらに五代くんは常に金欠でしたから、彼女の家で晩御飯をご馳走になることが多く、その中でいつしか七尾家のご両親とも仲良くなり、親公認になるまで発展していきました。

あら あたし平気よ2年くらい。

10巻「PART♥6 大安仏滅」127ページより

五代くんにとってそうではなくとも、こずえちゃん視点で見れば、彼は常に彼氏だったでしょうし、引用部のようにしっかりと結婚を匂わせているにもかかわらず、彼は別れを切り出すでもなく付き合いを続けているのですから、本当に男女関係をしていると思い込んでも、彼が自分との結婚のタイミングを待っていると考えても、仕方のないことと思います。

その間、五代くんはこずえちゃんに、響子さんのことを好きだと伝えなかったのですから、余計に彼の意思が自分にだけ向いていると感じてしまうでしょうね。
響子さんも、自分と彼との関係がはっきりしていない状態で、彼は実は私のことを好きなんです、なんて言えるはずがありませんから、やはり彼女には五代くんのことを黙っていましたし。

そういうことで、この、こずえちゃんとの関係解消は、高橋留美子さんも頭を悩ませただろうと想像されます。
彼女が、五代くんと響子さんの関係を知らないまま、退場させるためにはどうしたらいいのか、と。

いや、知らせればよかったじゃない、と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、それはそれで物語の軸がブレるでしょうし、ドロドロな展開になりそうですし、ページ数もかさむでしょうから、決められた最終回の日程に向けてどれだけ破綻なく物語を終わらせられるかと考えた場合、やはりこずえちゃんは事情を知らないまま退場してもらった方がいい、と私には思えます。

だって五代くんと管理人さんのことをこずえちゃんに話してしまった、ずっと騙していたことがバレてしまいますからね。彼女は知らないままじゃないと、さすがに酷です。

響子さんのことを知らせてしまうと、物語のエピローグ「PART♥10 P.S.一刻館」におけるこずえちゃんの一コマも、ああいう風には描けなかった可能性が高まりますし、現在得られているような作品評価にはならなかったかもしれません。
いかに、こずえちゃんにとって五代くんがいい人のまま終われるか、いい関係のまま終われるか。これは物語の後味の良さ・悪さに通じるところですので、繊細な判断が必要だったと私には感じられます。
そのくらい物語を締めくくる上で、こずえちゃんは重要なキャラクターに育っていました。
作者さんもそこまで考えて彼女を登場させてはいなかったのではないでしょうか、初登場当時は。

そのためにどのような別れ方を描くか、というところで、こずえちゃんの代わりに痛い目に遭ったのは響子さんでした。
「六本木朱美」もそうですか。しかし、朱美さんは五代くんとは「体つながったって心バラバラ」(14巻199ページ)というくらい、友人・知人関係以上にはならないですから、辛い想いはしていないはずです。

響子さんは、こずえちゃんの結末をできる限り綺麗に終わらせるために、彼女と五代くんがキスをするところを目の当たりにしたり、五代くんからプロポーズをされたと聞かされたり、五代くんが朱美さんとラブホテルから出てきたところを見たと聞かされたりと、散々な目に遭い、大いに心をかき乱されました。
一刻館を出て、管理人を辞めようとさえしていますから。
より具体的な内容はぜひ単行本14巻をご覧になってください。

まとめ

まとめます。

『めぞん一刻』のメインキャラの一人「音無響子」は、一人称を「私」と「あたし」とで使い分けている。
「私」は理性的な立ち振る舞おうとしているときや、話し相手との親密度がそこまで高くないときに用いられているもの、「あたし」は感情が上回っているときや、相手との親密度が高いときに用いられているものと思われる。
とりわけ7巻と14巻での「あたし」使用率の急上昇は物語を読み解く上で、また音無響子の心情を読み解く上で重要なポイントになっている。
理由はどちらも彼女の恋が急展開しているから。どちらも彼女の心がかき乱されることがとても多い巻で、物語の盛り上がりと「あたし」の使用率は大いにシンクロしている。

というのが、私なりの解釈と感想でした。

本文に書いたことは私なりの意見や解釈でしかありません。決して情報を鵜呑みになさらず、参考程度に抑えて受け取ってくださると幸いです。

ということで、今回はここまでになります。
最後まで読んでくださって、本当にありがとうございました。

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