『めぞん一刻』考察:カーディガンが語る響子と五代の恋愛の深化

めぞん一刻
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めぞん一刻』は何度読み返しても新たな発見があります。それほど高橋留美子先生が細かいところまで心を配し描いておられたのでしょう。

めぞん一刻歴40年以上になるのに、最近まで気づけなかったこともありました。
それは「ニットのカーディガン」です。
響子さんと五代くんが、付き合う前と後とで同じカーディガンを着ているのですね。

具体的な場面のご紹介と、そこから読み取れる時代的な恋愛観や響子さんの恋愛観などを考察していきます。

ネタバレについてはバレ要素が含まれています。バレても大丈夫な方のみ下方スクロールをお願いいたします。

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めぞん一刻とカーディガン

作品名めぞん一刻
作者高橋留美子
単行本1巻と最終巻の初版発行日1982年5月1日、1987年7月1日
ジャンル青年、恋愛、ラブコメ
発行社小学館
レーベルビッグコミックス
巻数全15巻(単行本)

高橋留美子さんによるラブコメの金字塔『めぞん一刻』。
東京にある、当時でも古さを感じさせる下宿屋「一刻館」に、新しい管理人として「音無響子」がやって来て、隣人とのトラブルから一刻館を退去しようとしていた「五代裕作」が彼女に一目惚れして退去を取りやめるところから物語が始まります。
彼はその後も一途に彼女を想い続け、長い長いドタバタ劇を繰り広げた後に彼女の心を射止め、結婚をします。

私はアニメ版から入った口ですが、アニメ放送開始と漫画連載の終盤とで一時期タイミングが被っており、その被っていたころから私はめぞん一刻を見始め・読み始め、以降好きでい続けています。

長年親しんできた本作ですけど、最近になって気づいたことがあります。
それが冒頭でもお伝えしている「お揃いのニットカーディガン」です。
同じカーディガンを響子さんが着ている話数・巻数と、五代くんが着ている話数・巻数とが離れていることもあって、なかなか気づけませんでした。

皆さんは気づいていましたか?
以降ネタバレを書きますので、本作をお持ちの方は記事に進む前にどの場面のどの洋服かを探してみてくださいね。
では、いきましょう!

この場面です!!

いきなり結論からいきましょう。
同じカーディガンを着ている場面それは……

響子さんがニットカーディガンを着ている画像
14巻「PART♥4 わかってください」84ページより

1つは、14巻「PART♥4 わかってください」から同巻「PART♥5 大逆転」にかけて、響子さんが着ている厚手のニットカーディガンです

五代くんが響子さんと同じカーディガンを着ている姿が描かれている場面の画像
15巻「PART♥8 形見」166ページより

もう1つは、15巻「PART♥8 形見」で、五代くんが着ているニットカーディガンです。

ね、同じデザインでしょう?
白黒なのでわかりませんがおそらく白かベージュ系の色であること、襟から裾に続くニットの端がリブ編みになっていること、両袖口も同様のリブ編み、前のボタンが2つであること、ボタンが丸ボタンであること、大きさも同じくらいに見えますよね。

同一物の可能性は?

ここで検証をしてみましょう。
気になるのは、同じカーディガンを2人で着回しているのか、という点です。

私は同じカーディガンではないと思っています。
その理由をいくつかあげてみます。

ボタンが右前か左前か

と言いますのも、画像を確認すると、響子さんは前のボタンを「右前」に留めていて、五代くんは「左前」に留めているからです。

先ほどの画像を確認すると、このカーディガンは「ダブルブレスト」ではありません。
ダブルブレストとは「前身頃が二重になっていて、ボタンが縦2列に並んでいる」タイプのこと。コートやジャケットに見られますね。
ダブルではなくシングル、つまりボタンが縦1列にしか並んでいないことを確認できます。
にもかかわらず、右前と左前に逆に留めています。

響子さんが14巻で自分が着ていた右前のカーディガンを左前に仕立て直した可能性が全くないとは言いませんけど、可能性は低いでしょう。

身長差

また、理由には二人の「身長差」もあります。

2人が並んでいる様子を見ると、頭一つ分まで行かないくらいの身長差があります。
14巻「PART♥5 大逆転」で響子さんが、一刻館の玄関前にある段差低めの階段を一段使って、彼との身長差をカバーするシーンがあります。
響子さんが上った一段上の段は五代くんの足首のすぐ上ですから、一段の高さはせいぜい15cmくらい、20cmはないでしょう。
身長差をカバーしつつ彼女は彼にキスをするのですが、その際に少しだけ背伸びをしています。なので20cmくらいの身長差があると考えるのが妥当です。

サイズ差

「サイズ差」もありそうです。

画像の五代くんが着ている様子を見ると、彼の身体でも大きめサイズのように見えます。
2巻「PART♥2 帰らざる彼」で、五代くんは高校時代「ラグビー部」に所属していたことが判明しますから、一般の人の中ではガタイはいい方でしょう。
そんな彼が着て大きめに見えるくらいのサイズ感のカーディガンが同一物とは思えません。

こちらもやはり、彼のサイズに合わせて響子さんが編み直した可能性はなくはないです。
ただ、手間暇を考えると、イチから編み直した方が楽なのではと思え、現実的ではないように思います。

よって、あの2着のニットカーディガンは別物というのが私の結論です。

既製品か手編みか

カーディガンが別物として、既製品か、彼女の手編みかを考えてみましょう。

結論を言いますと「わからない」です。
が、手編みをした可能性は十分あると思っています。

既製品説

11巻「PART♥11 弱虫」では、彼女が彼に「ニットセーター」をプレゼントするべく、時計坂の駅前と思われる商店街で特売会(セール)のセーターを購入しています。

「五代さんのセーター、くたびれてたなー。出すぎたマネってことはないわよね。クリスマスだし……」(209ページ)

五代くんが保育園でアルバイトをしていて、子どもたちが汚れた手で触ったり引っ張ったりするものだから、彼のセーターの腹部が汚れまくり伸びまくりしていたのですね。

こういう過去の行動があるので、今夏取り上げているカーディガンも既製品を購入した可能性はあります。

手編み説

しかし、先ほどご紹介したクリスマスプレゼントとしてセーターを購入した11巻では、二人はまだお付き合いさえしていない段階です。
付き合っていない人に、手編みのカーディガンは想いがないとできないことです。
その意味が重すぎるので、そういう思わせぶりなことは響子さんは決してしないでしょう。
なのでセール品、なのですね。

逆に言えば、画像の15巻時は付き合っていて、結婚の約束をしている段階ですから、既製品ではなく手編みの可能性が十分にあります。

2巻「PART♥11 マフラーあげます」では、響子さんが五代さんや「三鷹」さん、一刻館の住人等々に平等にマフラーを編んであげています。
他にも編み物をしている場面は何度か描かれていますから、彼女にとって編み物は秋冬を中心に生活に馴染んだ趣味のひとつでありそうです。

ですから、14巻で自身が着ていたカーディガンも、15巻で五代くんが着ていたものも、彼女の手編みのカーディガンである可能性もあると思います。
付き合っている人に編んであげる、ことは響子さんの普段からの丁寧な暮らしぶりを想うに、ごく普通なことかなと。

よって、どちらかはっきりとはわからないものの、手編みだろうと個人的には思っています。そうであって欲しいという願望です。

叶わなかったペアルック?

響子さんは、音無の家に嫁いでからわずか半年で未亡人になってしまいました。
夫「惣一郎」が亡くなったためです。

死因は明らかにされていません。
しかし、彼が病気であったことは作中一度も書かれていませんし、逆に食べ物のエピソードは何度か描かれているため、健康面に問題のない人だったと思われます。
病気なら、わずか半年で亡くなる人に親が嫁には出さないでしょうし。それこそ物語で触れるべきことでしょう(けど一度も触れられていない)。
等々の理由から、彼は不慮の事故で亡くなった可能性を私は考えています。確証はありません。

そんな惣一郎さんと響子さんが出会ったのは、彼女が高校のときに彼が教師として彼女のクラスを担当したことがきっかけです。
2巻「PART♥11 マフ等、あげます」(218ページ)で、五代くんが(1浪した大学1年生)20歳のときに響子さんは年齢が22歳と言っていました。
3巻「PART♥8 私は負けない!!」(154ページ)では、響子さんの母「千草律子」が「惣一郎さんが亡くなってもう二年…」と言っています。

おそらくですけど彼女の在学中から二人は交際していて、でも結婚は彼女が高校を卒業するのを待ってからだったのでしょう。結婚は彼女が19歳の頃ではないかと思います。
あるいは千草家は反対していたみたいですので、両親の説得を含め、また結婚式の準備を考えると、彼女は20歳になっていたかもしれません。

いずれにしても彼女は若く、おそらく20歳前後で夫を亡くしていることになります。
この辺は作者さんが意図的に曖昧にしているように読めます。余白を残して、読者の想像力に委ねているのでしょうね。

20歳前後というと、世間では男女を問わず、交友関係を広げたり恋をしたり、色々なところに遊びに行ったりしているお年頃です。
彼女も結婚をした後に、惣一郎さんとあれこれしたかったでしょうけど、わずか半年では何かをする余裕がほとんどなかったものと想像されます。
例えば、ペアルックの洋服を着て出かける、みたいなことも。

もしかしたらですけど、今回取り上げているカーディガンを自分のものと五代くんのものと二人分編んだとすれば、亡夫とは叶えられなかったペアルックを着ることを叶えた瞬間だったのかもしれませんね。

ささやかな夢を叶えたのなら、やはり手編みであって欲しいですよね。皆さんはどう思いますか?

ペアルックは死んだ概念?

ペアルックという言葉を近年聞かなくなりました。
私も、今回の記事を書くにあたって、久しぶりにペアルックという言葉を使った気がします。
何十年ぶりというくらいのご無沙汰です。

めぞん一刻でも

昭和の時代は、よく漫画なりドラマなりで取り上げられていた題材だった感覚を持ちます。
当時の感覚としては、女性側から彼氏に同じデザインの服を着てとせがんでいた印象です。

本作『めぞん一刻』でもペアルックを題材にしたエピソードがあります。
4巻「PART♥4 夏の思い出」です。
夏の思い出が欲しい「七尾こずえ」が、ボーイフレンドの五代くんにお願いして、お揃いのTシャツを着てもらって、彼女の友だちに自慢をする、というこずえちゃんの意地らしさが発揮されているお話。
サブタイトルからして肉体関係的なことを想像してしまいますが、これは作者さんのミスリードということで。

そのくらい「あるあるネタ」で、当時の女性からすれば定番の愛情表現の一つだったのでしょう。ストレートな愛情表現ですよね。

ペアルックは存在しない?

現代、ペアルックのことを「リンクコーデ」や「シミラールック」と呼ぶそうです。
そのため恋人同士で同じデザインの服を、という概念自体は令和でも引き続き存在しているみたいですね。いつの世も同じように考える人が一定数いらっしゃるのでしょう。
ペアルックという言葉は死語化したと思っていいのかもしれません。

まとめ

まとめます。

『めぞん一刻』の14巻「PART♥4 わかってください」から「PART♥5 大逆転」にかけて、音無響子が着ているニットカーディガンと、15巻「PART♥8 形見」で、五代くんが着ているそれは全く同じデザインに見える。
これは響子さんが五代くんにプレゼントしたもので、同一物を二人で着回したものではないと推察される。
既製品か手編みかはわからないが、亡夫・惣一郎との結婚生活が短かかったこと、ペアルックが昭和の女性の愛情表現の一つとして定番だったことなどから、手編みであると捉えたい(願望)。

というのが、私なりの解釈と感想でした。

今回のことは高橋留美子さんにお会いできたら聞いてみたいです。

次回は、本作に定期的に描かれている別の日常生活に用いるアイテムから、時代的な変化を読み解こう、という記事を予定しています。お楽しみに!

本文に書いたことは私の意見や解釈でしかありません。書かれていることが絶対に正しいとは受け取らずに、一意見として参考程度に抑えて受け取ってくださると幸いです。

ということで、今回はここまでになります。
最後まで読んでくださって、本当にありがとうございました!

今回の考察の場面を原作で読んでみたいあなたへ

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本文でもご紹介している、響子さんがニットカーディガンを着ていた場面が収録されているのは14巻でした。

五代くんが同じデザインと思わるカーディガンを着ていたのは15巻です。最終巻ですね。
記事ではお伝えしたいコマをピンポイントで載せているだけで、その前後の物語がわかりにくいでしょうから、お手にとって確認してみてください。

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